『公認心理師国試必須センテンス』を買うべきかどうか
みなさん、お久しぶりです。
ダメダメ心理士日本代表です。
自分の勉強とブログなどの更新のバランスが取れず、しばらくお休みいただいていました。
後に別エントリで参考書籍などをご紹介したいと思いますが、先に先日発売になった『公認心理師国試必須センテンス』(福島哲夫・監修 学研メディカル秀潤社)について、簡単な書評を書き残しておきたいと思います。
『公認心理師国試必須センテンス』を買うべきかどうか
さて、6月21日(木)に発売された『公認心理師国試必須センテンス』。
当日、Amazonだけではなく、セブンアンドワイでも予約販売で売り切れてしまい、注目度の高さがうかがわれました。
かくいう私も、「おお、自力で問題作ったり調べたりしなくても勉強できるツールができた。ばんざーい(´▽`*)」と思って、発売日当日書店で買ったのです……が。
若干期待外れ、でした(´・ω・)。しょぼん…。
何が期待外れだったのか。
内容的には公認心理師試験ブループリントの内容をだいたいカバーしており、まだ調べつくせていないところも押さえていて、その辺は買う価値があったと思います。
ただし、
解説が少ない…んですよね。
私は現在、『心理学検定一問一答問題集』のA・Bを攻略中でして、問題だけではなく解説が秀逸で非常に助かっています。
『公認心理師国試必須センテンス』にも同じくらいの解説を期待していたのですが…。
実際は、私がTwitterであげているような、何かの資料から抜き書きした文章の穴埋めだけで、詳しい解説がないんです。
なので、とりあえず言葉は覚えられるけど、どういう理論が背景にあるのか、とか、他のこととどういう関連性があるのか、というところがわからない内容なんです。
さらに、前半は赤字でシートで隠して覚えるパートなのに対して、後半は前半の赤字部分を空欄にした全く同じ文章をのせているだけでした。
正直、
穴埋めだった赤字部分だけで十分かなぁ…(-_-;)
と思いました。
同じ文章を載せるのだったら、その分他の解説に割いて欲しいと思いました。
情報量としては『心理学検定一問一答問題集』の方が遥かに上だと思います。
また、参考文献もあまり載っておらず、自分で調べるにも手がかりがなく、情報の正確性を担保する上手も…うーん、という感じでした。
惜しいな~。
解説がもっとあればな~。
ただし、読んでいるだけでも勉強になる部分はありますし、お金に余裕がある人は『心理学検定一問一答問題集』との合わせ使いで、さらなる実力アップは期待できると思います。
ということで、さわりとして持っておくにはいいけれど、深く学ぶには物足りない、という感じでした。
参考になれば幸いです(´ω`*)。
心理学検定一問一答問題集(A領域編) [ 日本心理学諸学会連合 ]
心理学検定一問一答問題集 B領域編 / 日本心理学諸学会連合心理学検定局 【本】
くだらないご報告 その5 災害時等の心理的支援に関する参考書
公認心理師試験ブループリント攻略作戦もそろそろ折り返し地点に差しかかっています。
みなさんは、どのくらい攻略できましたか?
ダメダメ心理士日本代表の私は、ダメダメ心理士精神をフルに発揮するべく、コソコソ攻略しています(*´▽`*)。
さて、昨日のいつものごとくコソコソ図書館で資料にあっていたところ、“災害時の心理的支援”を勉強するのに良い本を見つけました。
…ていうか、これがブループリントのベースなんじゃないかいと思っています。
それは、これだー。
『災害時のメンタルヘルス』(酒井明夫・丹羽真一・松岡洋夫 監修 医学書院)
この本はDPATだけではなく、“こころのケアチーム”“サイコロジカル・ファーストエイド”についても詳しく書かれています。
さらに、特筆すべきは“惨事ストレスと支援者のケア”と題して、支援者ケアについても書かれている点だと思います。
内容的に公認心理師試験ブループリント・p16の“災害時等の心理的支援”の部分を全部カバーしており、個人的にはこの本がベースだったんじゃないかと思います。
しかーし。
5月27日(日)現在、Amazonとセブンアンドワイでは既に売り切れている模様…。
みんな早いねー(´▽`*)。
でも、心配にはおよびません。
私が目を通した感じでは、試験該当部分はこの本の一部に過ぎないと思っています(多分、総論、“こころのケアチーム”“サイコロジカル・ファーストエイド”“惨事ストレスと支援者のケア”)。
ですので、図書館でちょっと確認するだけで事足りるのではないでしょうか。
(個人的には試験が終わったら読んでみたい本であることは確かです)
また、5月27日(日)の時点で楽天には在庫があるようです。
災害時のメンタルヘルス[本/雑誌] / 酒井明夫/監修 丹羽真一/監修 松岡洋夫/監修 大塚耕太郎/編集 加藤寛/編集 金吉晴/編集 松本和紀/編集
さらに、
医学書院の公式サイトでは電子版を購入できます。
↓
(紙の本と電子版、両方を直接購入することができます。さすが医学書院(*´▽`*))
Amazonではまたぞろ、せどりが倍以上の値段で売っていますが、医学書院の公式サイトから購入すれば正規の値段で買うことができるので、振り回されないように注意しましょう。
(この本、B5サイズなので、個人的には電子版の方が欲しいですね~)
という、相変わらず、くだらないご報告でした(´ω`*)。
くだらない独り言 その2 精神医学の参考書は『標準精神医学』(医学書院)の一択だと思っています
ダメダメ心理士日本代表の私。
何がダメって、基礎心理学をすっ飛ばしているからダメダメなんです(*´▽`*)キャハ。
というわけで、ここが私の鬼門なんですが、幸い『心理学検定一問一答』(日本心理学諸学会連合会心理学検定局)という、非常にありがたーい問題集があるので、勉強しやすいなあ、と思います。
(ありがたやー、ありがたやー)
さすが、日本心理学諸学会連合会が作っただけあって、公認心理師関係の問題なども盛り込まれていて、幅広~い、めっちゃひろ~い(´▽`*)。
(あ、若干溺れそう…ブクブク.。o○)
基礎心理学から健康心理学、犯罪心理学、法律、制度まで、非常によく公認心理師試験ブループリントの範囲をカバーしていると言えるでしょう。
しかも、解説が秀逸で、問題解いてるだけで基礎心理学の流れや関連が掴めちゃう。
『公認心理師現任者講習会テキスト2018年版』(金剛出版)を復習するのにも、役立ちますし、公認心理師試験受験には必須のテキストと思っています。
(私は1か月で、この問題集をコンプするヨ( ー`дー´)キリッ)
しかし、気になる点が1つ。
それは、“精神疾患とその治療”の範囲が弱い、と感じるところです。
触れてはいるんですけど…。
何というか、「どういう風に精神科医療の範囲が、発達心理学や犯罪心理学などの分野につながっているか」、とか、そういうところが弱い感じがするんです…。
精神科医療の“カタチ”あるいは“視点”といったものがわかりにくいかなあ、というか…。
精神科医療など医療機関で働いた経験がある人には忘備録として役に立つと思うけれど、初学者には向いていないかな、と思う次第です。
そこで、先のエントリでは精神医学の範囲を勉強するための本をいくつかあげた…、のですが。
公認心理師試験まで残すところ3か月ちょっとというところで、全部を読むのはほぼ不可能だと思います。
それにお財布にも厳しいよね…(´・ω・)。
そこで、おせっかいながらも、私なりに考えたわけですよ。
「もし、今から公認心理師試験対策のために1冊だけ精神医学の本を買うとしたら、どれにするか」
そして、この度1つの結論に達しました。
『標準精神医学第7版』(医学書院)一択だな(∩´∀`)∩
標準精神医学 第7版 (Standard Textbook)
この本はたびたびTwitterでも取り上げているのですが、試験まであと3か月という時点で精神医学を勉強する本で迷っている方に、改めて推したいと思っています。
しかし、ここまで推してると
「お前は医学書院の回し者か(。-`ω-)」
と思う方もいらっしゃるでしょう。
でも、
それは誤解です!;つД`)
私、公認心理師試験ブループリントが公開される前から、この本の第6版を持っていたんです。
それに、この本が役に立っている理由は、ちゃんとあるんですよ〜。
①医師国家試験を意識している
巻末に「医師国家試験出題基準(平成30年版)」が載っている通り、この本は相当、医師国家試験を意識していると考えられます。
また、「医師国家試験出題基準(平成30年版)」は興味深いことに、出題内容が公認心理師試験ブループリントと重なる部分が多いんです。
(自殺対策基本法、民法〈成年後見制度〉、日内〈概日〉リズム〈サーカディアンリズム〉などなど)
考えてみれば、公認心理師試験の問題も医師国家試験の問題も、作っているのは同じ厚労省。2つの試験の出題基準をある程度合わせてくるのは、自然な流れなんじゃないでしょうか。
きっと、この本を内容を押さえていれば、公認心理師試験の問題にも十分対処できると思うんです。
②公認心理師試験ブループリントの広範囲をカバーしている
この本は表題の通り、「医師に向けた精神医学」の本です。
しかし、だからといって、精神病理や精神薬理とか、医学的な話に終始しているわけじゃないんです。
精神疾患と治療にまつわる法律、制度、リハビリ、他分野への関連、さらには心理検査、心理療法、発達理論などなど、「これって臨床心理学の専門知識じゃね?」といったことまで、非常に幅広い内容を取り上げているんです。
(構成的に医学・精神医学=60%、精神医学関連=40%といった感じ)
さらに、説明が簡素かつ的確なところが、なんとも小憎らしい(笑)。
公認心理師試験ブループリントで取り上げられている、“概日リズム”“発達障害者支援法”といったことも、ちゃんと載っていて、しかも、わかりやすく読みやすい文量で書かれているのが、非常にありがたいんです。
そして最後に
さりげなく、ICD‐10とDSM‐5両方に対応
DSM‐5の変更点も押さえているところが
一番のチャームポイント(´▽`*)♡
…ご理解いただけますと幸いです。
私の試験勉強では
『公認心理師現任者講習会テキスト2018年版』(金剛出版)
『心理学検定一問一答』(日本心理学諸学会連合会心理学検定局)※A・B領域両方
『保健と健康の心理学第2巻 保健医療・福祉領域で働く心理職のための法律と倫理』(ナカニシヤ出版)
と並んで(あるいはそれ以上)、活躍しており、
今や私の中で
公認心理師試験必携テキスト・四天王
となりつつあります。
…ということで、現時点で「精神医学の勉強、どの本でしょう」と考えているみなさん。
おススメします。
最後に、あらためて
ありがとう、医学書院。
とっても助かってまーす(*´▽`*)。
また、くだらなくなって、すみません…。
災害時派遣精神医療チーム(DPAT)(問題270~280)
5月も半ばにさしかかり、試験まで残すところ3か月半。
みなさん、試験勉強は進んでいますか?
私は相変わらず、ダメダメ道を突き進んでいます( ー`дー´)キリッ。
さて、今回はなかなか知る機会が少ない、災害時等の心理的支援についてです。
自称・ダメダメ心理士日本代表の私は、「テンパりやすくて、一番災害支援に行っちゃいけない人」と自覚しておりますが、
厚労省は
「公認心理師試験を受験するからには、災害時等の心理的支援についても勉強せよ(。-`ω-)」
とプレッシャーをかけている。
しょーがない、勉強してやるか…。(*´Д`)←どこから目線?
ということで、公認心理師試験ブループリントp16に書かれている“災害派遣精神医療チーム(DPAT)”を確認していきましょう。
問題
問題270 次の文章に当てはまるものを選びましょう。
自然災害や航空機・列車事故、犯罪事件などの大規模災害等の後に被災者及び支援者に対して、被災地域の都道府県の派遣要請により被災地に入り、精神科医療及び精神保健活動の支援を行なうための専門的な精神医療チーム。
1.サイコロジカル・ファーストエイド 2.災害時派遣精神医療チーム 3.自衛隊
問題271 Aに当てはまるものを選びましょう。
(A)とは、災害派遣精神医療チームのことを指す。
1.PCAT 2.心のケアチーム 3.MMSE 4.DMAT 5.DPAT
問題272 災害派遣精神医療チームについて、AおよびBに当てはまるものを選びましょう。
チームの構成メンバーは、精神科医師、(A)、(B)の3名以上とされる。
1.看護師 2.薬剤師 3.業務調整員 4.調理員 5.事務職員
問題273 Aに当てはまるものを選びましょう。
(A)とは、被災地への経路を調べたり、情報収集、物品管理、連絡調整など、医療活動以外のロジスティック全般を担う。
1.業務調整員 2.精神科医師 3.警察 4.DPAT調整本部 5.保健師
問題274 業務調整員に当たる職種を全て選びましょう。
1.事務職員 2.心理職 3.医師 4.看護師 5.薬剤師
解答
問題270 解答
2.災害派遣精神医療チーム
問題271 解答
(A)ーDPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)
※解説:PCATは日本プライマリ・ケア連合学会災害医療支援チーム、DMAT(Disaster Medical Assisrtance team)は災害派遣医療チームを指す。MMSEは認知障害のスクリーニングテストの略。
問題272 解答
(A)ー1.看護師 (B)-3.業務調整員
問題273 解答
1.業務調整員
問題274 解答
1.事務職員、2.心理職、5.薬剤師
(出典:病院で働く心理職 野村れいか・日本評論社)
いかがでしょうか。
私は災害時の医療派遣チームって赤十字病院が派遣するものだけだと思っていたのですが、学会単位や組織単位でいろいろあるんですね~。
『病院で働く心理職(野村れいか、日本評論社)』によると、
「災害時の精神医療活動には、通常の診療に加え、DMAT(災害派遣医療チーム、Disaster Medical Assistance Team)等の多様な医療チーム、保健師チーム等との連携を含めた災害時精神保健医療のマネージメントに関する知見が必要であり、この活動を担うべく、専門的な技術・能力を有する災害派遣精神医療チームがDAPTである(DAPTマニュアルver.1.1、2015)」
とあります。
つまり、災害時版精神科専門病院、みたいな感じでしょうか。
また、注目すべきポイントは、自然災害だけでなく、航空機事故や列車事故など、大規模事故の支援に入る点だと思っています。
さて、そんなDPATの中で心理職が求められている仕事は、被災者(被害者)のカウンセリングだけ、と思っていたら大間違い。
心理職は薬剤師や事務員と同じく、“業務調整員”という立場です。
上記にもあるように、“情報収集”、“物品管理”、“連絡調整”などの雑務もやらなければなりません。
これについて、野村れいかさんはきっちり、著書の中で次のように釘を刺されています。
以下『病院で働く心理職(野村れいか、日本評論社、2017年)』より引用ーーーー
パソコン、電話対応、クロノロ、未決リストの作成など、現場で求められること、できることをさせて頂く。(中略)日頃の臨床現場での業務内容と異なるからといって、「それは心理士の仕事ではない」というスタンスはNGである。(p191)
衛星電話やトランシーバーの使い方を練習する、自県で発災した際の動きについて防災訓練を行う、サイコロジカルファーストエイドや災害支援に関する知識を学んでおくなど、普段から万が一に備えた準備が必要であろう。
災害時AEDやアンビューバックの使用、心臓マッサージなどの、最低限の救命措置はできることが求められる。心理職だからできない、は通用せず、医療チームの一員として求められることはできるように、練習しておくことが望ましい。(p192)
ーーーー以上、引用終わり。
はー、ごもっともです。
被災地において
「私は心理職だからカウンセリングや心理検査以外はしないの」
「AEDなんて使ったことない。どうすればいいかわかんないです」
なーんて言った日には、
「心理職つかえなーい」
「帰ってチョーだい」
と言われるに決まっています。
一応、精神医療専門、心理職とは言っても、命の危険に晒されている人を助けられるように、最低限の救命措置の訓練はしましょう、その他、自分で動けるよう、機材の使用方法も練習しましょう、ということですね。
(私の病院でも、心理職や事務員でも救命措置ができるよう、心臓マッサージやAEDの使い方の訓練を半年に1度受けます。病院内で意識不明の患者さんを見つけたときに、どの職種でも対応できるようにしています)
さらに、ここで公認心理師試験ブループリントp16にも載っていた“サイコロジカル・ファーストエイド”が出てくるんですね。
きちっと、時間があるとき、きちっとおさらいしておきましょう。
次に、DPATの具体的な仕事内容などを確認しましょう。
問題
問題275 A、Bに当てはまるものを選びましょう。
DPATの活動理念は、国・自治体の災害支援の一部として公的に活動=すべては(A)のために行なうというものであり、「それは自分の仕事ではない」「あれは自分がやった」という態度は(B)べきであり、すべては(A)のための活動であるとされる。
1.励行される 2.慎む 3.被災者 4.患者 5.自治体
問題276 次のDPATの活動原則を示す英語を選びましょう。
(A)ー名脇役であれ
(B)-積極的な情報共有
(C)-自己完結型の活動
1.Supply 2.Share 3.Self-analysis 4.Support 5.Self-sufficiency
問題277 A~Cに当てはまるものを選びましょう。
被災地での活動は、活動場所及び場所によって、①(A)、②(B)、③(C)と大きく3つに分けられる。
1.救助活動 2.DPAT調整本部 3.災害対策本部 4.現地活動 5.DPAT活動拠点本部
問題278 次の文章に当てはまるものを選びましょう。
統括者を中心に、被災地の状況を把握し、現地におけるDPAT活動を取りまとめ、適宜DMATや消防、自衛隊、警察など他チームとの連携、調整を行なう。
1.DPAT活動拠点本部 2.地域精神医療機関 3.DPAT調整本部 4.現地活動 5.PCAT
問題279 次の文章に当てはまるものを選びましょう。
現地隊の配置やスケジュール管理、あがってきた情報を整理し、適宜調整本部へ連絡・調整を行う。
1.DPAT調整本部 2.DMAT 3.応援保健師チーム 4.災害対策本部 5・DAPT活動拠点本部
問題280 次の文章に当てはまるものを選びましょう。
被害の大きかった病院に行き、被災状況を確認し、調整本部に報告する。個別面談をする。多団体とのミーティングに参加する。
1.災害対策本部 2.警察 3.DPAT調整本部 4.自衛隊 5.現地活動
解答
問題275 解答
(A)ー3.被災者 (B)-2.慎む
問題276 解答
(A)ー4.Support 名脇役であれ
(B)-2.Share 積極的な情報共有
(C)-5.Self-sufficiency 自己完結型の活動
※解説:3S(スリーエス)と呼ばれる
問題277 解答
(A)ー2.DPAT調整本部
(B)-5.DPAT活動拠点本部
(C)-4.現地活動
問題278 解答
3.DPAT調整本部
問題279 解答
現地隊の配置やスケジュール管理、あがってきた情報を整理し、適宜調整本部へ連絡・調整を行う。
5・DAPT活動拠点本部
問題280 解答
被害の大きかった病院に行き、被災状況を確認し、調整本部に報告する。個別面談をする。多団体とのミーティングに参加する。
5.現地活動
(出典:病院で働く心理職 野村れいか・日本評論者)
いかがでしたでしょうか。
野村れいかさん(2017)はDPATについて、
「自分が所属する組織、支援システムを理解し、適宜報告、相談することは、平時の病院臨床の中で行っていることと共通している。相手の求めることを見立て(アセスメントする)、必要な支援を行うことは臨床と通ずるものである。組織の一員として、現場で求められていることに取り組み、専門性にこだわらず、多職種と連携する等、普段当たり前に行なっていることが災害時にも活かされると考える」(病院で働く心理職、日本評論社 p191)
と仰っています。
禿同です(∩´∀`)∩
普段から自分の専門性ばかりにこだわるのではなく、その場で何が求められているのか、自分に何ができるのか、ということを追求する姿勢が重要だと思っています。
野村れいかさんが書かれた『病院で働く心理職』(日本評論社、2017年)には、DPATの他に、アルコール依存症やがん治療など、公認心理師試験ブループリントに書かれているリエゾンの実際が書かれています。
また、医療領域で働く心理職へのアドバイスも書かれており、これからの心理職の在り方を非常によくまとめていると思います。
文章が平易なので理解しやすく、「これから医療領域で働きたいと思っている」「医療領域は詳しくないで勉強したい」という心理士さんに広くおススメできると思っています。
これを機会に、医療領域の活動も知ってしまいましょう~(´ω`*)
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犯罪被害者支援と犯罪被害者等基本法(問題263~270)
みなさん、1人の対象者(患者さん)に、月いくらの税金が使われているかしっていますか?
私はちょこっと関係者に聞いたことがあるのですが、想像以上の金額でした。
(数万~数十万単位じゃないですよ(´ω`*)。しかも少なくとも、×12か月×3年分以上かかっているようです)
再犯防止、患者さんの人権擁護、適切な治療のためにはそのくらいかけてもいいかな、と思います。
でも、
「じゃあ、被害者は同じだけの税金を使って被害を補償されているのか?」
と言えば、実際はどうなんでしょう…。
加害者には多額の税金がつぎ込まれ、法的に物心両面のフォローがされる一方、
被害者は誰からも被害も保証されず、損害を受けた人生を立て直すこともできないとしたら…。
しかも、少年事件や医療観察法関係の場合、加害者保護の観点から、被害者が表立って加害者を批判することもできないことが多いと思います。
被害者の損害、心情など、この辺の問題をどのように解決しているのでしょうか。
その辺が、公認心理師試験ブループリントp17および22にも載っている、犯罪被害者支援および犯罪被害者等基本法に含まれていると思います。
精神科臨床ではDV、性的暴力、その他の事件などに巻き込まれた患者さんに会うことも多いです。
加害者のための法律だけではなう、被害者を守る制度についても確認しておきましょう。
問題
問題263 次に当てはまるものを選びましょう。
この法律においては、犯罪被害者のための施策の基本理念を明らかにして、国、地方公共団体及びその他の関係機関並びに民間団体等の連携のもと、犯罪被害者等のための施策を、総合的かつ計画的に推進されることが明言されている。
1.刑事訴訟法 2.少年法 3.犯罪被害者保護法 4.犯罪被害者等基本法 5.刑法
解答
問題263 解答
(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p202)
いかがでしたでしょうか。
犯罪被害者等基本法の3条では、「すべての犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保証される権利を有する」として、犯罪被害者等の権利宣言がされており、「犯罪被害者支援の憲法と呼んでもよいであろう(2011 藤本哲也 よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房 p202)」とあり、犯罪被害者の権利を保障する非常に重要な法律だとわかります。
「よくわかる刑事政策(ミネルヴァ書房)」では、“警察段階”、“検察段階”、“裁判段階”、“矯正・保護段階”の4つの段階に分けて具体的な支援制度が説明されています。
以下、確認してみましょう。
問題
問題 264
警察における被害者対策の施策は、①被害者に対する(A)の提供、②相談・(B)体制の整備、③(C)過程における被害者の負担軽減、④被害者の(D)の確保等である。
1.金銭
2.証言
3.情報
4.捜査
5.安全
6.助言
7.カウンセリング
8.治療
解答
問題264 解答
(A)ー3.情報
(B)-7.カウンセリング
(C)-4.捜査
(D)-5.安全
(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p202)
いかがでしたか?
「被害者支援は警察だけでは限界がある(2011 藤本哲也 よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房 p202)」ことから、警察、検察庁、弁護士会、臨床心理士会などからなる“被害者支援連絡協議会”というものもあるそうです。
ここで、心理士が関係してくるんですね。
その他、警察庁では下記のようなHPで、犯罪被害者支援をための情報を提供を行っているので、時間がある方は確認してみると良いでしょう。
では、次に検察段階における犯罪被害者支援制度です。
問題
問題265
従来から犯罪被害者には、犯人の処罰を求めて(A)を行う権利等が認められているほか、検察官の不起訴処分に対する救済制度として、(B)が設けられている。
1.告訴 2.被害者等調査 3.検察審査会 4.傍聴 5.捜査
問題266 次の文章に当てはまるものを選びましょう。
同制度では、被害者が死亡した事件またはこれに準じる重大事件において、被害者等に通知の有無を確認して、被害者等が通知を希望する場合に事件の処理結果、公判期日、判決結果等を通知する。
1.刑事和解 2.犯罪被害者保護法 3.犯罪被害給付制度 4.裁判員裁判 5.被害者等通知制度
問題267 次の文章で一般釈放情報通知制度にあてはまるを選びましょう。
1.起訴・不起訴等の事件の処理結果の通知
2.公判期日の通知
3.判決結果等の通知
4.受刑者の釈放予定時期の通知
5.自由刑の執行終了予定時期等の通知
6.仮釈放または自由刑の執行終了による釈放及び釈放年月日等の通知
解答
問題265 解答
(A)ー1.告訴 (B)-3.検察審査会
問題267 解答
5.被害者等通知制度
問題268 解答
5.自由刑の執行終了予定時期等の通知 および
6.仮釈放または自由刑の執行終了による釈放及び釈放年月日等の通知
※解説 “受刑者の釈放予定時期の通知”は「特別釈放情報通知・通報制度」にあたる。
被害者等の再被害を防止し、その保護を図るもので、①検察官から被害者等に対する、受刑者の釈放予定に関する通知、②行刑施設等から警察に対する、受刑者の釈放に関する通報、を行う。
(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p203)
いかがでしたでしょうか。
ものすごく、「あったり前(´・ω・)」と思われるようなことも、意外と制度が整うまではやっていなかったんですね~。
特に“特別釈放情報通知・通報制度”はDVやストーカー事件で大事なのかもしれません。
では次に、裁判段階における犯罪被害者保護・支援制度ですが、「よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房(藤本哲也)」によると、今のところ特別な裁判段階における特別な規定はないようです。
しかし、被告人や傍聴人の前で証言できないときは、被告人や傍聴人を退廷させたり、公序良俗に反すると判断された場合は、審理を非公開にすることもできるようです。
また、刑事訴訟法改正により、証人が著しく不安などを覚えるときは、付添人を許可すしたり、精神的平穏を著しく害されるおそれがあるときは、遮蔽措置をとることができるようになった、ようです(2011 藤本哲也 よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房 p203)。
これは、性犯罪の被害者保護にとても重要だと思われます。
次回以降で触れる、犯罪被害者保護二法の“ビデオリンク方式による証言”と関係があると思われます。
では、最後に矯正・保護段階における犯罪被害者支援制度を確認しましょう
問題
問題269 次の文章に当てはまるものを選びましょう。
受刑者の罪名、犯罪の原因となった性行、社会復帰の障害となる要因等に着目して、同じ類型に属する受刑者を少人数グループに編成した上で、社会適応上の問題点を改善するために行われる指導。
1.構成的エンカウンターグループ 2.処遇類型別指導 3.SST 4.医療観察法 5.カウンセリング
問題270 次の文章に当てはまるものを選びましょう。
仮釈放の実質的な条件である社会感情を判断する要素の1つとして被害者感情があり、必要に応じて、被害者や遺族の感情、被害弁償の有無等についても調査し、仮釈放審理の重要な判断材料にする。
1.環境調整 2.被害者等調査 3.生活実態の申告 4.司法面接 5.刑事和解
解答
問題269 解答
2.処遇類型別指導
問題270 解答
2.被害者等調査
いかがでしたでしょうか。
警察、検察、裁判、矯正・保護、それぞれの段階で制度の名称などに違いがありますが、犯罪被害者の状況や心情を思いやる措置が取られ始めているんですね。
また、経済的問題は“犯罪被害給付制度”で手当てしていくようですので、次回以降確認しましょう。
労働問題と同じく、変化が大きいと思うので、最新の情報もチェックしておきましょうね~(*´▽`*)。
よくわかる刑事政策 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)
説明義務とインフォームド・コンセントをドラマで学ぶ 『白い巨塔』のススメ
GWは結構寝て過ごしていましたが(笑)、ただ寝ていたわけではありません。
実は久々に『白い巨塔』を没頭して見ていました。
『白い巨塔』はみなさん、一度はどこかで聞いたとこがあるのではないでしょうか。
原作は山崎豊子さん。
ドラマ化2回、映画化1回というように、何度もリメイクされており、大学病院と医療界を描いた作品では最も有名だと思われます。
一番最近リメイクされたのは2003年。
私はリアルタイムで見ており、毎週「財前先生の総回診」が楽しみでした(*´▽`*)。
このドラマの目玉は、なかなか知られることのない大学病院の内部なのですが、
もう1つの目玉が医療過誤裁判です。
物語の主人公は大学病院で、ありとあらゆる手を使って出世をもくろむ医師・財前と、
あくまで患者目線に立った医療を追求する医師・里見。
ある日、財前はがん患者・佐々木の治療を担当するのですが、不運にも佐々木は命を落とし、その後、遺族から医療過誤を問われ、裁判を起こされます。
この先はネタバレになるので詳しく書きませんが、説明義務やインフォームド・コンセントを勉強してから見ると、ドラマの中で裁判所が下した判決の理由がよくわかります。
リアルタイムで見ていたときは、「医者って大変ね~」くらいに思っていました。
しかし、公認心理師法ができて、心理士も説明義務、注意義務、過失そしてインフォームド・コンセントの徹底を問われるとき、
「私、財前先生と同じ立場に立ったら、どう説明するだろう…」
と思わざるを得ませんでした。
心理士の中には
「自分は財前のような傲慢な対応はしていないよ」
と思っている方も多いと思います。
…でも、果たしてそうでしょうか。
本当に、そう言い切れますか?
特に心理面接が思い通りに進まなかったとき、
「クライアントや患者さんが悪いから…」
とか、思ったことないでしょうか…(; ・`д・´)
さらに、勉強になるのは、がん治療と緩和ケア、インフォームド・コンセントの現実が描かれていることです。
医療領域の勉強をしてもピンとこなかった方も、これを見れば理解しやすいかもしれません。
先のエントリで取り上げたインフォームド・コンセントの基準に照らし合わせたとき、
医師・財前の治療方針と説明、医師・里見の治療方針と説明の違いが鮮明なります。
この辺も大きな見どころです。
文献での勉強の息抜きに、ご覧になってみてください(´ω`*)。
※筆者の一押しは大河内教授と裁判官(控訴審)のおじいちゃんです(笑)
心神喪失者医療観察法(問題240~245)
精神科医療と深い結びつきがある刑事政策に、“心神喪失者医療観察法”があります。
“医療観察法”とも言われますし、現場の人は“医観法(いかんほう)”と略して呼んだりします。
この法律ができたきっかけは、池田小学校児童殺傷事件だったと記憶しています。
犯人が精神科に通院し、治療を受けていたこともあり、当時、精神障害者の治療や精神科医療に対し、社会からものすごい批判がありました。
(この事件については、犯人の精神鑑定をした医師が鑑定書を書籍として公開しています。ご興味のある方はご覧ください。精神鑑定、心理検査などの勉強になるほか、医療観察法を考えるために非常に参考になる書籍です)
このようなきかっけでできた、心神喪失者医療観察法(以下、医療観察法)。
では、医療観察法の概要とシステムを確認しましょう。
(Twitterで文字制限のため書ききれなかったので、ブログでごめんなさいです(*´Д`))
問題
問題240 次のA~Dに当てはまるものを選びましょう。
まず本法は、その1条において目的規定を置き、「この法律は、心神喪失等の状態で重大な他害行為(他人に害を及ぼす行為をいう。以下同じ。)を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続き等を定めることにより、継続的かつ適切な(A)並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の(B)及びこれに伴う同様の行為の(C)の防止を図り、もってその(D)を促進することを目的とする」
1.処罰 2.再発 3.医療 4.社会復帰 5.治療 6.改善
解答
問題240 解答
(A)ー3.医療
(B)-6.改善
(C)-2.再発
(D)-4.社会復帰
(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p142)
いかがでしたでしょうか。
きっかけはどうあれ、医療観察法は、①犯罪を犯した精神障害者に適切な治療を受けさせ、②病状の安定により再犯を防止し、さらに③社会復帰させましょう、という目的を持っていると理解できます。
ここで、
「なんでわざわざ、犯罪を犯した後に治療を受けさせるの?犯罪を犯す前に治療を受けさせればいいじゃないか」
という意見がありそうです。
しかし、精神疾患は今でも偏見が強い病気です。
先に、インフォームド・コンセントの部分でも説明したように、精神疾患であれ患者さんが治療を拒否すれば、それ以上病院は何もできません。
そのため、未治療の精神疾患の患者さんが結構いるのです。
また、
“精神障害者=将来の犯罪者なのだから、強制的に治療を受けさせるべき”という考え方をしたならば、
まさに偏見であり、人権侵害です。
多くの精神障害者は犯罪とは無縁のまま、一生を過ごされます。
個人的には、医療観察法は未治療の患者さんをフォローする、という意味もあるんだと思っています。
(この辺は、日本の精神医療や精神保健福祉の歴史を勉強してくださいね(*´▽`*))
では、医療観察法どういう場合に適応されるのか、確認しましょう。
問題
問題241 医療観察法について、A~Gに当てはまるものを書きましょう。
本法の対象者は、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)(以上は未遂も含む)
、(F)、(G)(軽微なものを除く)等の他害行為を行った者で、行為時に心神喪失か心神耗弱で検察官が不起訴とした者、及び、心神喪失や心神耗弱により無罪または有罪(執行猶予つき)の判決が確定した者である。
解答
問題241 解答
(A)ー殺人
(B)-放火
(C)-強盗
(D)-強姦
(E)ー強制わいせつ
(F)ー傷害致死
(G)ー傷害
(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p142)
いかがでしたでしょうか。
全部書けましたか?
公認心理師現任者講習会テキスト2018(金剛出版)では、強姦、強制わいせつ以下が書いてありませんでしたが、筆者は、できれば医療観察法の対象行為全てを押さえておいた方がいいと思っています。
これらはいわゆる“重大犯罪”と呼ばれるもので、繰り返されると社会的損失が大きいんですよね。
なので、特にこれらの犯罪を犯した患者さんは、しっかり手当てして、再犯を防止しましょう、ということなんだと思います。
では、どういうシステムで対象者(患者さん)が処遇されるか確認しましょう。
問題
問題242 次のA、Bに当てはまるものを選びましょう。
申し立てを受けた裁判所は、国公立病院に付設する(A)に対象者を(B)入院させることになる。病院においては、精神保健判定医が再び対象行為を行うおそれについて(B)を行い、入院の必要性について意見を付する。
1.措置 2.専門治療施設 3.鑑定 4.大学病院 5.精神病棟
解答
問題242 解答
(A)ー2.専門治療施設
(B)-3.鑑定
(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p142~143)
いかがでしたか?
実は医療観察法の対象者はどこの精神病院に入れてもいい、ってわけじゃないんです。
所定の人員配置や施設がある専門治療施設に入ってもらう制度になってるんですが、実は、この専門治療施設が非常に少ないんです。
理由は、設置・維持になどに非常にお金がかかるからです。
(普通の精神病院よりも手厚い人員配置、警備体制などが求められます)
ちなみに、私の住む地域にも専門治療施設はありません。
なので、対象になった患者さんは、わざわざ専門治療施設のある場所に行き(すっごく遠くまで行く)、社会復帰するときは、元の居住地に戻る、という大移動をしなければならないことが多いんです。
結構、対象者も大変なんですよね~。
さて、専門治療施設に入った後に審判が行われます。
裁判官が保護観察所長に、対象者の生活環境の調査・報告を求めます。
そして、この報告に基づき、他害行為の有無、心神喪失・心神耗弱状態の有無などを確認し、処遇を判断します(2011 藤本哲也 よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p143)。
では、最終的にどういう処遇があるのか確認しましょう。
問題
問題243 A、Bに当てはまるものを選びましょう。
①医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定((A))
②入院によらない医療を受けさせる旨の決定((B))
③この法律による医療を行わない旨の決定
1.入院決定 2.不処分 3.審判不開始 4.送致 5.通院決定
解答
問題243 解答
(A)ー1.入院決定
(B)-5.通院決定
(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p143)
いかがでしたでしょうか。
ちなみに、『よくわかる刑事政策』(藤本哲也・ミネルヴァ書房)には、①~③の「いずれにも該当しない場合には、検察官による申し立てを却下することとしている(40条)」とあります。
つまり、全部で4つの処分に分かれるということですね。
では、入院決定と通院決定の具体的内容を確認しましょう。
問題
問題244 次のA~Cに当てはまるものを選びましょう。
入院決定の場合には、厚生労働大臣が定める指定入院医療機関(国公立病院)にといて、専門的な医療を受けることになる。期間は(A)であり、医療機関は、(B)の診察の結果、入院の必要がなくなったと判断した場合には、保護観察所長の意見を付して、(C)に退院許可を申し立てなければならない。
1.無期限 2.地方裁判所 3.家庭裁判所 4.6か月 5.精神保健指定医
問題245 次のA、Bに当てはまるものを選びましょう。
通院決定の場合は、厚生労働大臣の定める指定通院医療機関に通院させることになる。期間は(A)で、保護観察所長の申し立てにより2年以内の延長が認められる。保護観察所(社会復帰調整官)が対象者の生活の観察・指導を行い、通院の必要がなくなれば、指定通院医療機関の管理者と協議の上、(B)を申し立てることになっている。
1.通院継続 2.治療終了 3.5年 4.3年 5.社会復帰
解答
問題244 解答
(A)ー1.無期限
(B)-5.精神保健指定医
(C)-2.地方裁判所
(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p143)
問題245 解答
(A)ー4.3年
(B)-2.治療終了
(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p143)
いかがでしたでしょうか。
こうやって見ていると、医療観察法は少年法と似た構造を持っているな、と感じます。
少年法が少年の保護、教育、社会復帰を目的にしていたのと同じように、
医療観察法も主に精神障害者の保護、治療そして社会復帰を目的にしています。
また、少年法に少年院など特別な処遇施設があるのと同じように、
医療観察法にも専門治療施設という特別な処遇施設があります(少年院などとくらべ、数が少なすぎますが)。
違うのは、少年法では家庭裁判所が審判を行うのに対し、医療観察法では地方裁判所が審判などに関わっている点でしょうか。
また、現任者講習会でも精神医学のところで出てきた、“精神保健指定医”が関わることもポイントだと思います。
精神保健指定医は措置入院、医療保護入院など本人の意思とは関係ない入院の他に、医療観察法でも重要な役割を果たします。
(医療観察法による入院、通院治療が裁判所などの決定であり、対象者(患者さん)の意思とは関係なく行われるためと考えられます)
ところで、最後の問題で
「えっ?3年で通院終わりなの?その後、患者さんどうなるの?」
と思った、そこのあなた。
鋭いです(`・ω・´)。
実は私の知る限り、居住地での通院処遇(通院決定)の3年間が終了すると、対象者(患者さん)は、ただの、普通の精神障害者、つまり患者さんになります。
もはや、裁判所や保護観察所の強制力が働かない、一般の患者さんです。
そして、当然、精神病院での治療においても患者さんの意思が尊重されるので、対象者(患者さん)が、
「自分は精神病じゃない。悪いことしてない。治療もしない」
と言って、治療をやめても止められません。
(リスボン宣言、説明義務、インフォームド・コンセントのエントリを参照のこと)
そうなると当然、病気の再発の可能性が高くなり、聞いたところによると、医療観察法の処遇終了後、再犯に至るケースもあるとか…。
また、被害者のフォローが欠けている点も、今後の見直しの課題になるかと思います。
(対象者(患者さん)が高い税金を使い、数年単位でフォローされるのに比べて、被害者には同じだけのフォローがされません)
ということで、実は今、医療観察法も見直しの時期に入っているんです。
今後、医療観察法も法の実効性、運用、人員配置などが検証され、変わってくると思いますし、被害者の損害回復をどうするか、ということも議論されるでしょう。
また、医療観察法は、精神医療と精神障害者福祉の歴史を踏まえて、初めてその意味が理解できると思います。
ぜひ、私宅監置、ライシャワー事件、宇都宮病院事件なども確認して、今後の医療観察法のあり方を考えて欲しいと思っています(´ω`*)。
よくわかる刑事政策 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)
精神病者私宅監置の実況 現代語訳 [ 呉秀三 ]