心理学試験のための問題と資料

公認心理師試験をはじめとした、心理学試験のために作成した問題をのせています。問題は専門書から一部抜粋し変更して作成しています。お役に立てると嬉しいです。

精神医学を学ぶための参考書について

9月に行われる公認心理師試験がこれまでの臨床心理士試験と違うのは、精神医学と関連領域の出題範囲の広さにあると思っています。

現任者講習会を既に修了した方はご存知と思いますが、この講習会でも精神医学とその周辺の医学分野には教育、福祉など他の分野に比べて倍以上の時間が割かれていました。よって、試験勉強をするにあたっては精神医学と精神医学周辺の知識(リエゾン、緩和ケアなど)はきちんと確認する必要があると筆者は読んでいます。

 

しかし、一口に“精神医学”と言っても……広い。

 

ブループリントを見ると、統合失調症から気分障害発達障害、さらには認知症高次脳機能障害、薬剤性精神病など、精神医学のあらゆる知識を要求されていることがうかがえます。

私のキャリア(というか専門)は精神科医療と福祉なので勉強にはあまり苦労しないのですが(かと言って手抜きもしません。自分の知識を確認するためにきっちり勉強します)、精神科医療の経験がない方や乏しい方は勉強に相当苦労されるんじゃないかと思っていました。

 

ということで誠に僭越ながら、私が推薦する精神医学の参考書をご紹介いたします。

ちなみに私は今年から大学生などの実習を引き受ける予定ですが、実習生にも下記の本を読んで予習するよう大学の先生にお願いしてあります。

学生さんで“これから公認心理師を取るために大学で勉強する方”や、“将来、精神科医療など医療分野で働くことを検討している方”にもオススメいたします。

(ただしダメダメ心理士日本代表を自認しているので、その辺り、ご容赦ください)

 

 

①必携のもの

 

・ICD‐10 精神及び行動の障害ー臨床記述と診断ガイドライン

 融通男・中根允文・小見山実・岡崎祐士・大久保善朗 監訳 医学書院

何よりも先に買うべき本はこれです。

「え?DSMじゃないの?」と思ったそこのあなた。

医療領域の診断基準のスタンダードはICDです。

診断書、役所に出す書類、カルテの診断名は全てICD-10で統一されています(ブループリントもICD-10です)。

ICD‐10は国際基準なので、齟齬がないよう統一されているのかもしれません。

ICD-10DSM-5には疾病の分類に若干の違いがあります。

(例えば境界性パーソナリティ障害ICD-10では情緒不安定性パーソナリティ障害と記述されています。)

あまりICD-10に馴染みがない方は、この機会に確認してみるといいと思います。

ちなみに私は心理検査報告書を書くときなど、常に臨床でこの本の記述を確認しています。

ICD-10は近々11に改訂されるようです。

 

・標準精神医学第7版 

 野村総一郎・樋口輝彦 監修、尾崎紀夫・朝田隆・村井俊哉 編集 医学書院

今回、試験勉強するにあたって非常に活躍してくれている本です。

精神疾患、病理、治療薬、精神障害者福祉からリエゾンまで、ブループリントの精神医学と医療分野の大半をこの一冊でカバーしていると思います。

発達、パーソナリティといった一見、心理学の専門分野と思われる内容も書かれているので、精神医学がこの辺りをどのように考えているか確認するのにも役立つと思います。

また巻末には医師国家試験の精神医学分野の出題範囲も記載されていますが、これがブループリントに非常に重なる部分が多いのです。

私は今のところ第6版しか持っていないので、問題もここから出典した内容になっていますが、先日Twitterで医学書院の方から第7版が出ているとご案内いただきました(ありがとうございます(*˘︶˘*).。.:*♡)。

既にネットで注文したので、近々問題も第7版からだすことになると思います。

 

・精神医学ハンドブック第7版

 山下格 日本評論社

私の職場にはある精神医学の権威の先生がいらっしゃって、怖いもの知らずの私が「精神医学を勉強するためにオススメの本を教えてください」と聞いたところ推薦された本です。

内容はさらっと精神疾患全般をまとめたものですが、比較的平易な文章で書かれており、記述量も多くなく、初学者などにオススメです。

私の職場のDrは略全員がお持ちのようです。

お医者さんと精神疾患の知識を揃えるためにも持っていて損はない一冊です。

 

 

 

 ②あった方がいいもの

 

・精神科専門医のためのプラクティカル精神医学

 山内俊夫 総編集、岡崎祐士・神庭重信・小山司・武田雅俊 編集 中山書店

標準精神医学が学術的・まとめ的に書かれていたのに比べて、こちらは現場目線から書かれた本です。

これも、とある権威の精神科医の先生に勧められた本です。

内容は標準精神医学とほぼ一致しますが、現場目線なので精神科医療の経験がない方でもお医者さんの診療の流れや考え方がわかると思います。

結構厚い本ですが、文章が平易なので初学者にも読めると思います。

ICD-10、標準精神医学、精神医学ハンドブックの間隙を埋めるのに役立つと思います。

個人的には、これから病院実習生を控えている学生さんや医療と連携することを考えている心理士さんなどに必ず読んでほしいと思っています。

 

・精神症候学第2版 

 濱田秀伯 弘文堂


精神症候学第2版 [ 浜田秀伯 ]

精神医学の専門知識や用語を簡潔に説明している本です。

読み込むのではなく、辞書的に使っています。

ICD-10、標準精神医学、精神医学ハンドブックなどでわからない言葉がある方は、こちらを手元に置きながら読むと理解しやすいと思います。

 

・臨床知能診断法 

 中野光子 山王出版

神経心理学高次脳機能障害の心理検査について詳しい一冊です。

実践的に書かれているので、初学者でも理解しやすいと思います。

心理検査を勉強するのにもオススメです。

 

高次脳機能障害学第2版

 石合純夫 医歯薬出版

こちらも神経心理学系ですが、失行、半側空間無視認知症から脳の解説まで、幅広く網羅しています。

症状別の神経心理学的検査についても解説されており、ブループリントで認知症やMMSEがわからなかった方は、こちらで確認するといいと思います。

 

・脳血管障害と神経心理学 第2版 

 平山蕙造・田川晧一 編集 医学書院


脳血管障害と神経心理学第2版 [ 平山恵造 ]

高次脳機能障害関係をさらに深めたい方に…というか、今後はこのくらいの知識が心理士にも求められのかもしれません。

高次脳機能障害第2版に載っていない詳しい知識が載っています。

 

 

以上、独断と偏見に基づいてオススメしてみました。

量は多いですが、ブループリントの内容を見ながら確認すると、心理学専門分野とのつながりも理解しやすいと思います。

また、これから勉強されたい方は読んで損はないと思います。

 

当然、私も全部持っており、臨床には欠かせません。

 

お役に立てれば嬉しいです。(*´∀`)