心理学試験のための問題と資料

公認心理師試験をはじめとした、心理学試験のために作成した問題をのせています。問題は専門書から一部抜粋し変更して作成しています。お役に立てると嬉しいです。

リスボン宣言

Twitterにて、公認心理試験において“リスボン宣言が重要らしい”という話題があったので、一応調べておきました。

以下、2012年・柳澤信夫著『現代医学概論』(医歯薬出版株式会社)から引用してまとめてみます。

 

 

リスボン宣言は私も職場で見聞きしたことがあります。

“患者様の権利”についてまとめられたものですね。

精神科は患者さんの権利を制限することが多いので、とても重要視しています。

 

では、具体的にどのような経緯で決められ、どのような内容になっているのでしょうか。

 

現代医学概論』p167には以下のように書かれています。

 

 

以下引用ーーーー

 

 近年、医療における患者の自己決定権を重視する動きが高まり、これは医師の世界代表機関である世界医師会(WMA)の「患者の権利に関するリスボン宣言」として1981年以来改訂を重ねて現在に至っている。

 

ーーー引用終わり

 

 

へー。

私はてっきり、WHOが決めているかと思っていたのですが、違ったんですねー。

世界医師会(WMA)なんて初めて聞きましたよ~。

 

 

じゃあ、リスボン宣言の具体的な内容どのようなものでしょうか。

ざっくりした内容を『現代医学概論』p167から引用してみます。

 

 

以下引用ーーー

 

①良質の医療を受ける権利(ただし経済的視点については言及されていない)

②選択の自由の権利(セカンドオピニオンを含む)

③自己決定の権利(インフォームド・コンセント

④情報に関する権利

守秘義務の権利

⑥尊厳、宗教的支援の権利(終末期医療)

 

ーーー引用終わり

 

 

なるほどー。

リスボン宣言が重要な理由がわかってきますね。

 

③の“自己決定の権利”は前回、民法・契約法で触れたインフォームド・コンセントと重なります。

インフォームド・コンセント民法だけではなく世界医師会(WMA)も「大事にしましょう」と言っているんですね。

 

また、⑤の“守秘義務”は言わずもがなでしょうか。

リスボン宣言でも大事にされている、ということですね。

 

あと、⑥の“尊厳、宗教的支援の権利(終末期医療)”は緩和ケアやサイコオンコロジー(精神腫瘍学)、がん治療など、リエゾン精神医学と重なる部分ですね~。

 

 

その他にも重要な内容がまとめられていますので、この機会に全部確認しておきましょう。

 

 

 

以下、2012年・柳澤信夫著『現代医学概論』(医歯薬出版株式会社)p168から引用ーーー

 

表15‐3 患者の権利に関するリスボン宣言の項目

1.良質の医療を受ける権利

  *誰でも、最善の利益に即した、良質の医療

  *供給が限られる医療は公平な選択手続きによる

2.選択の自由の権利

  *医師、病院、保健サービス機関を自由に選ぶ権利

  *治療中に他の医師の意見を求める権利

3.自己決定の権利

  *情報を得て検査、治療に同意、不同意する権利

4.意識のない患者

  *法律上の権限を持つ代理人インフォームド・コンセント

  *緊急医療の容認。事前の意思表示(advanced directive)の尊重

5.法的無能力の患者

  *法的代理人の同意が必要。出来るだけ患者の意思決定を

  *救急の場合、患者の最善の利益に即して行動

6.患者の意思に反する処置

  *医の倫理に合致する場合、法律が認める場合は例外的に可

7.情報に対する権利

  *自己の情報、説明を受ける権利

  *第三者からの患者に関する情報は、第三者の同意なしに伝達は不可

  *情報が患者自身の生命、健康に危険をもたらすおそれがあると信ずるべき十分な   

   理由があれば、患者に与えなくてよい

8.守秘義務に対する権利

  *患者情報(健康状態、診断、治療、予後など)は死後も守秘義務。ただし患者の

   子孫は自分の健康上のリスクに関する情報を得る権利あり

  *患者の同意あるいは法律により情報開示

  *個人情報保護

9.健康教育を受ける権利

  *健康に対するすべての人の自己責任が強調されるべき

  *個人の健康と保健サービスについて情報を得た上で選択

10.尊厳に対する権利

  *患者の文化および価値観の尊重

  *医療と医学教育で常に尊重

  *人間的な終末期ケアを受ける権利

  *尊厳を保ち、安楽に死を迎えるための助力を受ける権利

11.宗教的支援に対する権利

  *信仰する宗教の聖職者による支援を含む精神的、道徳的慰問を選択する権利

 

ーーー以上、引用終わり

 

 

ふーむ、なるほど。

 

“6.患者の意思に反する処置 *医の倫理に合致する場合、法律が認める場合は例外的に可”は、精神科の措置入院医療保護入院に関わってくるのかもしれません。

自殺や他害などが示唆された場合の例外的措置も関係するのかもしれませんね。

 

あと、健康増進法や健康日本21のように、国民や患者さんが主体的に健康維持に取り組もうと働きかける運動は、“9.健康教育を受ける権利 *健康に対するすべての人の自己責任が強調されるべき”に基づいて行われているのかもしれません。

 

さまざまな領域の法律や制度と関連がありそうです。

 

この機会に心理士も頭に入れておいた方がいいですね。

勉強になりました~(´ω`*)。

 

 

 


現代医学概論第2版 [ 柳沢信夫 ]