第1回公認心理師試験(2018年9月9日(日)北海道以外実施分)の回答を読み解く ~認知症・脳波編~
11月30日(金)にようやく、第1回公認心理師試験(9月9日(日)実施分)の合格発表と正答表が公表されました。
思わぬ結果になった方も多く、ダメダメ心理士日本代表である私のノミよりちっちゃーい心臓は、すでに極寒期の網走並みに震えあがっているでござるです…((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル。
厚労省、パネェ…(*´Д`)。
私は地震の影響で受験できず、12月16日(日)実施の追加試験を受ける予定ですが、自信激落ち。
そんな9月9日(日)の試験、問題で「?」と思っているものがありました。
それは午前問題・問10。
脳波の問題です。
脳波は公認心理師現任者講習会テキスト2018(金剛出版)にも載っていたので、一応押さえていました。
押さえてはいましたが…。
認知症の脳波は見落としてましたー(;´∀`)ヒー。
というか、認知症については必ず出ると思っていて、HDS-RやMMSE、アルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型認知症までは押さえていましたが、脳波まで出るとは思っていませんでしたヨ…トホホ。
正解した方、尊敬します。
ということで、今回は標準精神医学第6版(医学書院)を参考に、認知症の臨床経過や脳波について、おさらいしておきたいと思います。
第1回公認心理師試験(9月9日実施分)午前問題・問10
では先に、問題を確認しておきましょう。
問10 成人の脳波について、正しいものを1つ選べ。
①α波は閉眼で抑制される。
②α波は前頭部に優位である。
③β波はレム睡眠で抑制される。
④δ波は覚醒時に増加する。
うーむ…。
子どもや睡眠時の脳波が出るんじゃないかと思っていましたが、成人の脳波ですか。
そうですか。
しかも認知症…。
9月9日(日)の試験が終わってからいただいたコピーを見ていろいろ資料を漁っていたのですが、どうも決め手となる資料に行きつかなかった私。
やっぱり、ダメダメ心理士故か…。
と思っていたところ、なんと先日職場の空き時間に標準精神医学第6版を開いて、認知症の項目を読んでいたら…。
認知症の脳波
書いてあったああああああああ!!
しかも、いろいろ…。
実は今年4月に第7版が出ることを医学書院さんがTwitterで教えてくれて、それ以来、家では第7版、職場では第6版で勉強していました。
また、専門書は最新版の情報が優先されると思い、主に第7版に重きを置いていたのですが…。
認知症の項目は第6版と第7版ではかなり違っていたんですよね。
そっか…認知症は第6版の方がまとまっていたのか…。
ということで、今日は第6版を情報から抜粋して認知症をまとめてみます。
標準精神医学第6版による認知症解説
まず、認知症には大きく分けて①アルツハイマー型、②レビー小体型、③前頭側頭型認知症があります。
他にもいろいろな類型がありますが、先に上記3つのタイプと鑑別ポイントを押さえておく必要があるでしょう。
では、標準精神医学第6版に書かれているまとめを参照してみましょう。
①Alzheimer病の臨床経過(以下、標準精神医学第6版・p390より引用)
●前駆期:1~3年間
軽度認知機能障害期
記憶:新たな学習の困難、遠隔記憶も少し障害
知覚:地誌的失見当識、複雑な構成は困難
言語:ある属性の言葉のリストアップが困難、失名辞、内容の乏しい繰り返し発言
行動:無関心、時に焦燥、悲哀感や妄想
MRI:側頭葉内側、海馬の委縮
●stageⅡ:2~10年間
記憶:近時・遠隔記憶がさらに障害
知覚:構成障害、視空間失見当識、視覚失認
言語:流暢性失語、失名辞、錯語、理解不良、対話困難
他の認知機能:失行、失算
行動:落ち着かない、うろうろ
脳波:基礎律動の徐波化(※傍線筆者)
MRI:脳室の拡大、脳溝の開大
PETやSPECT:側頭葉の血流低下や代謝低下
●stageⅢ:8~12年間
認知機能:重度の障害
言語:反響言語、同義反復、語間代、構音障害、最終的には無言
運動機能:硬直、屈曲姿勢、両便失禁
脳波:広汎性の徐波(※傍線筆者)
MRI:脳室の拡大、脳溝の開大
PETやSPECT:側頭葉、前頭葉の両側性の血流低下や代謝低下
②Lewy小体型認知症(DLB)の臨床診断基準改定版(CDLBガイドライン改訂版)
(以下、標準精神医学第6版 医学書院・p400より引用)
1.正常な社会的または職業的機能に障害をきたす程度の進行性認知機能障害の存在。
初期には記憶障害が目立たないこともある。また、注意や前頭皮質機能や視空間機能の障害が特に目立つこともある。
2.コア特徴(probable DLBには2つが、possible DLBには1つが必要)
a)注意や明晰さの著名な変化を伴う認知機能の変動
b)構築され、具体的な内容の繰り返される幻視体験
c)特発性パーキンソニズム
3.示唆的特徴(コア特徴が1つ以上あり、これが1つ以上あればprobable DLB、コア症状がなくてもこれが1つ以上あればpossible DLBと診断できる)
a)レム睡眠行動障害
c)SPECTやPETにて線条体でのドパミントランスポーターの取り込み低下
4.支持的特徴
a)繰り返す転倒と失神
b)一過性の意識障害
d)他の幻覚
e)系統的な妄想
f)抑うつ
g)CT/MRIでの内側側頭葉の比較的保持
h)SPECT/PETでも全体的低血流と後頭葉の血流低下
i)MIBG心筋シンチグラフィでの取り込み低下
j)脳波での徐波と側頭葉の一過性鋭波(※傍線筆者)
5.可能性の少ないもの
a)局所性神経兆候や画像で裏づけられる卒中の存在
b)臨床像を説明しうる身体疾患や他の脳病変の証拠の存在
c)認知症が重篤な時期にパーキンソニズムのみが初めて出現した場合
6.症状の時間的連続性
認知症がParkinson症状の出現前かそれと同時に出現した場合にDLBと診断すべきであり、Parkinson病が経過するうちに認知症が出現した場合にはPDDという用語が使用されるべきである。この際、“one-year rule”が推奨されるが、“Lewy body disease”とか“α‐シヌクレイノパチー”といった総省が考慮されてもよい。
③前頭側頭型認知症の臨床経過(以下、標準精神医学第6版 医学書院・p397より引用)
●初期:1~3年間
人格:機転がきかない、無関心
判断力:障害あり
遂行機能:計画と抽象的事項の障害
記憶:比較的良好
地誌的見当識:正常
言語:正常か失名辞、繰り返し発言
計算:ほぼ正常
運動機能:正常
脳波:正常(※傍線筆者)
●中期:3~6年間
言語:常同的発語、理解不良、失語
記憶:比較的保たれる
視空間見当識:比較的保たれる
判断力:さらに悪化
遂行機能:さらに悪化
Klűver-Bucy症候群:部分症状が存在
運動機能:比較的保たれる
脳波:基礎律動の徐波化(※傍線筆者)
●末期:6~12年間
言語:無言、理解不良
記憶:悪化
視空間見当識:悪化
認知機能:重度の障害
脳波:広汎性の徐波、もしくは前頭葉・側頭葉の局所性徐波(※傍線筆者)
以上、引用終わり…。
ひー、書いてあるううううう(*´▽`*)。
どのタイプも診断基準ではないもの、脳波が徐波化する、つまりθ波かδ波になるって書いてあるじゃないかー。
ぬかったわ…!
もしかしたら、他の本にはもっとわかりやすく書いてあるんでしょう。
一方、厚労省は、「認知症は脳波まで押さえておきなさい」、もしくは「脳波は病状による変化も押さえておきなさい」って言いたいのかな…。
結構、高度ね~( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \。
…ということで、来年受験される方、来年再トライされる方。
標準精神医学お勧めします。
私はもう一度、復習しまーす(笑)。
という、とってもくだらないお話でした…。
標準精神医学 第6版 (Standard textbook)
標準精神医学 第7版 (STANDARD TEXTBOOK)