心理学試験のための問題と資料

公認心理師試験をはじめとした、心理学試験のために作成した問題をのせています。問題は専門書から一部抜粋し変更して作成しています。お役に立てると嬉しいです。

犯罪被害者支援と犯罪被害者等基本法(問題263~270)

www.npa.go.jp

先のエントリで取り上げた心神喪失医療観察法

 

sakura0501.hatenablog.com

 

みなさん、1人の対象者(患者さん)に、月いくらの税金が使われているかしっていますか?

私はちょこっと関係者に聞いたことがあるのですが、想像以上の金額でした。

(数万~数十万単位じゃないですよ(´ω`*)。しかも少なくとも、×12か月×3年分以上かかっているようです)

 

再犯防止、患者さんの人権擁護、適切な治療のためにはそのくらいかけてもいいかな、と思います。

 

 

でも、

「じゃあ、被害者は同じだけの税金を使って被害を補償されているのか?」

と言えば、実際はどうなんでしょう…。

 

加害者には多額の税金がつぎ込まれ、法的に物心両面のフォローがされる一方、

被害者は誰からも被害も保証されず、損害を受けた人生を立て直すこともできないとしたら…。

 

 

 しかも、少年事件や医療観察法関係の場合、加害者保護の観点から、被害者が表立って加害者を批判することもできないことが多いと思います。

  

被害者の損害、心情など、この辺の問題をどのように解決しているのでしょうか。

 

 

その辺が、公認心理師試験ブループリントp17および22にも載っている、犯罪被害者支援および犯罪被害者等基本法に含まれていると思います。

 

 

精神科臨床ではDV、性的暴力、その他の事件などに巻き込まれた患者さんに会うことも多いです。

加害者のための法律だけではなう、被害者を守る制度についても確認しておきましょう。 

 

 

 

 

問題

問題263 次に当てはまるものを選びましょう。

この法律においては、犯罪被害者のための施策の基本理念を明らかにして、国、地方公共団体及びその他の関係機関並びに民間団体等の連携のもと、犯罪被害者等のための施策を、総合的かつ計画的に推進されることが明言されている。

 

1.刑事訴訟法 2.少年法 3.犯罪被害者保護法 4.犯罪被害者等基本法 5.刑法

 

 

 

 

 

 

 

 

解答

問題263 解答

4.犯罪被害者等基本法

(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p202)

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

犯罪被害者等基本法の3条では、「すべての犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保証される権利を有する」として、犯罪被害者等の権利宣言がされており、「犯罪被害者支援の憲法と呼んでもよいであろう(2011 藤本哲也 よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房 p202)」とあり、犯罪被害者の権利を保障する非常に重要な法律だとわかります。

 

 

「よくわかる刑事政策(ミネルヴァ書房)」では、“警察段階”、“検察段階”、“裁判段階”、“矯正・保護段階”の4つの段階に分けて具体的な支援制度が説明されています。

以下、確認してみましょう。

 

 

問題

問題 264

警察における被害者対策の施策は、①被害者に対する(A)の提供、②相談・(B)体制の整備、③(C)過程における被害者の負担軽減、④被害者の(D)の確保等である。

 

1.金銭

2.証言

3.情報

4.捜査

5.安全

6.助言

7.カウンセリング

8.治療

 

 

 

 

 

 

解答

問題264 解答

(A)ー3.情報

(B)-7.カウンセリング

(C)-4.捜査

(D)-5.安全

 (出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p202)

 

 

 

いかがでしたか?

「被害者支援は警察だけでは限界がある(2011 藤本哲也 よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房 p202)」ことから、警察、検察庁弁護士会臨床心理士会などからなる“被害者支援連絡協議会”というものもあるそうです。

ここで、心理士が関係してくるんですね。

 

その他、警察庁では下記のようなHPで、犯罪被害者支援をための情報を提供を行っているので、時間がある方は確認してみると良いでしょう。 

 

www.npa.go.jp

 

 

 

 では、次に検察段階における犯罪被害者支援制度です。

 

 

問題

問題265

従来から犯罪被害者には、犯人の処罰を求めて(A)を行う権利等が認められているほか、検察官の不起訴処分に対する救済制度として、(B)が設けられている。

1.告訴 2.被害者等調査 3.検察審査会 4.傍聴 5.捜査

 

問題266 次の文章に当てはまるものを選びましょう。

同制度では、被害者が死亡した事件またはこれに準じる重大事件において、被害者等に通知の有無を確認して、被害者等が通知を希望する場合に事件の処理結果、公判期日、判決結果等を通知する。

 

1.刑事和解 2.犯罪被害者保護法 3.犯罪被害給付制度 4.裁判員裁判 5.被害者等通知制度

 

 

 問題267 次の文章で一般釈放情報通知制度にあてはまるを選びましょう。

1.起訴・不起訴等の事件の処理結果の通知

2.公判期日の通知

3.判決結果等の通知

4.受刑者の釈放予定時期の通知

5.自由刑の執行終了予定時期等の通知

6.仮釈放または自由刑の執行終了による釈放及び釈放年月日等の通知

 

 

 

 

 

 

 

 

解答

 問題265 解答

(A)ー1.告訴 (B)-3.検察審査会

 

問題267 解答

5.被害者等通知制度

 

問題268 解答

5.自由刑の執行終了予定時期等の通知 および 

6.仮釈放または自由刑の執行終了による釈放及び釈放年月日等の通知

※解説 “受刑者の釈放予定時期の通知”は「特別釈放情報通知・通報制度」にあたる。

被害者等の再被害を防止し、その保護を図るもので、①検察官から被害者等に対する、受刑者の釈放予定に関する通知、②行刑施設等から警察に対する、受刑者の釈放に関する通報、を行う。

 

(出典:よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房・p203)

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

ものすごく、「あったり前(´・ω・)」と思われるようなことも、意外と制度が整うまではやっていなかったんですね~。

特に“特別釈放情報通知・通報制度”はDVやストーカー事件で大事なのかもしれません。

 

 

では次に、裁判段階における犯罪被害者保護・支援制度ですが、「よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房藤本哲也)」によると、今のところ特別な裁判段階における特別な規定はないようです。

 

しかし、被告人や傍聴人の前で証言できないときは、被告人や傍聴人を退廷させたり、公序良俗に反すると判断された場合は、審理を非公開にすることもできるようです。

 

また、刑事訴訟法改正により、証人が著しく不安などを覚えるときは、付添人を許可すしたり、精神的平穏を著しく害されるおそれがあるときは、遮蔽措置をとることができるようになった、ようです(2011 藤本哲也 よくわかる刑事政策 ミネルヴァ書房 p203)。

 

これは、性犯罪の被害者保護にとても重要だと思われます。

次回以降で触れる、犯罪被害者保護二法の“ビデオリンク方式による証言”と関係があると思われます。

 

 

では、最後に矯正・保護段階における犯罪被害者支援制度を確認しましょう

 

問題

問題269 次の文章に当てはまるものを選びましょう。

受刑者の罪名、犯罪の原因となった性行、社会復帰の障害となる要因等に着目して、同じ類型に属する受刑者を少人数グループに編成した上で、社会適応上の問題点を改善するために行われる指導。

1.構成的エンカウンターグループ 2.処遇類型別指導 3.SST 4.医療観察法 5.カウンセリング

 

問題270 次の文章に当てはまるものを選びましょう。

仮釈放の実質的な条件である社会感情を判断する要素の1つとして被害者感情があり、必要に応じて、被害者や遺族の感情、被害弁償の有無等についても調査し、仮釈放審理の重要な判断材料にする。

1.環境調整 2.被害者等調査 3.生活実態の申告 4.司法面接 5.刑事和解

 

 

 

 

 

 

 

 

解答

 問題269 解答

 2.処遇類型別指導

 

問題270 解答

2.被害者等調査

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

警察、検察、裁判、矯正・保護、それぞれの段階で制度の名称などに違いがありますが、犯罪被害者の状況や心情を思いやる措置が取られ始めているんですね。

 

また、経済的問題は“犯罪被害給付制度”で手当てしていくようですので、次回以降確認しましょう。

 

 

労働問題と同じく、変化が大きいと思うので、最新の情報もチェックしておきましょうね~(*´▽`*)。

 

 

 


よくわかる刑事政策 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)