感染症と院内感染対策(問題146~152)とおまけ
Twitterでもお知らせしたように、季節外れのインフルエンザ(A型)にかかってしまった私。
優しい看護師さんの厳しい助言により(笑)、あえなく4日間の自宅療養を余儀なくされたのでありました(;´∀`)
しかーし、こんなことくらいでめげる私ではありません。
せっかくの機会ですので、公認心理師試験ブループリントp20にもある“感染症対策”について、私の事例をめいっぱい利用しながら、確認しましょう。
今回は最後に、実践感染症対策のおまけもつけてみました。
1. 感染症について
問題
では先に、公認心理師現任者講習会テキスト2018版から、作った問題で基本を押さえていきましょう。
問題146 次のA、Bに入るものを選びましょう。
(A)、細菌、真菌、(B)、異常プリオン等の病原体が感染(体内に侵入、定着、増殖)することにより出現する病態を感染症という。
1.ウィルス 2.花粉 3.異物 4.寄生虫 5.体液
問題147 次のA、Bに入るものを選びましょう。
感染後症候が出現する(A)に対して、感染が抗体出現で確認されても症候がしないものを(B)という。
1.日和見感染 2.顕性感染 3.潜伏期 4.潜在感染 5.不顕性感染
問題148 次のA、BおよびCに入るものを選びましょう。
不顕性感染があり、病原体が長期間存在するものを(A)といい、(B)が低下すると顕性感染となる。健常人には感染しないような病原性の弱い微生物による感染で、(B)が低下している場合に起きるものを(C)といい、医療機関でその予防が問題となる。
1.抵抗力 2.日和見感染 3.感染防御能 4.潜在感染 5.飛沫感染
解答
問題146 解答
(A)ー4.寄生虫 (B)-1.ウィルス
(出典:公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版] 金剛出版・p132)
問題147 解答
(A)ー2.顕性感染 (B)-5.不顕性感染
(出典:公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版] 金剛出版・p132)
問題148 解答
(A)ー4.潜在感染 (B)-3.感染防御能 (C)-2.日和見感染
(出典:公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版] 金剛出版・p132)
いかがでしたでしょうか。
問題146と147は大体、察しがつくと思いますが、問題148はHIV/AIDS(後天性免疫不全症候群)のことを知らないとわからないかもしれません。
インフルエンザをはじめ、世の中には様々な感染症がありますが、その中でも、HIV/AIDS(後天性免疫不全症候群)は特殊な感染症に入るようです。
インフルエンザの潜伏期間は1~3日で、急激に発症し、38℃を超える高熱などの特徴的な症状を呈します。インフルエンザにかかって「風邪かな?」と思い違いをする人がいても、必ず発症して発熱したり、風邪のような症状が出ますよね。
そういう意味ではインフルエンザは顕性感染に入るのかもしれません。
一方、HIV/AIDS(後天性免疫不全症候群)は感染してすぐ症状が出るわけではなく、しばらくの間は自覚症状がないまま、健常者と同じ生活を送ることができます。
こういう意味では、不顕性感染なのでしょう。
しかし、ウィルスの増殖に従い、本来備わっていた免疫能力(CD4の値)が落ちてきて、健常者では感染しないようなウィルスや菌に感染して発病するようになります。
これが、日和見感染ということになると思います。
感染症の概念は、リエゾン精神医学に出てくるHIV/AIDS(後天性免疫不全症候群)に対する心理的支援にも必要な知識ですので、押さえておいて損はありません。
では、次に感染の広がり方を押さえていきましょう。
問題
問題149 次の説明にあてはまるものを選びましょう。
病原体に汚染された物体・食品・汚物・手指などから主に口からまたは性行為により体内に侵入して感染する。
1.接触感染 2.垂直感染 3.空気感染 4.飛沫感染 5.日和見感染
問題150 次の説明にあてはまるものを選びましょう。
咳やくしゃみの飛沫が1~2メートルの距離で吸入して感染する。
1.接触感染 2.集団感染 3.飛沫感染 4.垂直感染 5.空気感染
問題151 次の説明にあてはまるものを選びましょう。
空気中に飛沫に含まれる水分が蒸発して粒子(飛沫核)として浮遊しているものを吸入して感染する。
1.母子感染 2.飛沫感染 3.顕性感染 4.空気感染 5.接触感染
問題152 次の説明にあてはまるものを選びましょう。
母親から胎児・新生児に胎盤や母乳を介して直接伝播して感染する。
1.飛沫感染 2.垂直感染 3.接触感染 4.母子感染 5.空気感染
解答
問題149 解答
1.接触感染
(出典:公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版] 金剛出版・p132)
問題150 解答
3.飛沫感染
(出典:公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版] 金剛出版・p132)
問題151 解答
4.空気感染
(出典:公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版] 金剛出版・p132)
問題152 解答
4.母子感染 または 2.垂直感染
(出典:公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版] 金剛出版・p132)
いかがでしたか?
一口に“感染”と言っても、実に様々な経路がありますね。
インフルエンザは基本的に飛沫感染、接触感染だと聞いています。
特に飛沫感染は大きなくしゃみをして一気に周りにいる人に感染させることがあるので、医療機関では要注意です。
ただし、空気感染はしません。
一方、母子感染(垂直感染)で有名なのはやはりHIV/AIDS(後天性免疫不全症候群)でしょう。
近年、HIV/AIDS(後天性免疫不全症候群)も治療薬が進歩し、以前のような“死に至る病”ではなく、慢性疾患に近くなってきたと言われています。
それに伴い、高齢化したHIV/AIDS(後天性免疫不全症候群)患者様をどうケアするか、という問題が出てきていますし、女性の場合は、結婚・出産をどうするか、という問題も考えていかなければなりません。
(余裕のある方は、こちらでHIV/AIDS(後天性免疫不全症候群)について確認しましょう。
独立行政法人 国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センターhttp://www.acc.ncgm.go.jp/index.html
独立行政法人国立病院機構大阪医療センター・HIV/AIDS先端医療開発センター
この他、公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版]では、風邪、結核にも触れていますので、他の本も参考に代表的な感染症について確認しておきましょう。
2.院内感染対策について
さて、次に“院内感染対策”について確認していきましょう。
普段、医療機関の感染対策に馴染みのない方のために、ここで私の今回の顛末(笑)を思う存分利用して考えてみましょう。
今回、私は日曜日の午前にインフルエンザを発症したのに気づきました。
既に私が住んでいる町のインフルエンザ警報は解除されていましたが、症状的にどう考えてもインフルエンザでした。
私が働いているのは精神科病院。
月曜日から閉鎖病棟の患者さんの予約も毎日入っている…。
どうしよう…。
出勤すべきか、休むべきか…。
みなさんなら、どうしますか?
実はここで迷ってはいけないのです。
何故かというと、インフルエンザは非常に感染力が高い感染症で、出勤して患者さんに接触すると簡単にうつしてしまう恐れがあります。
しかも閉鎖病棟で患者さんにうつしてしまったら、病棟内で感染を拡大させてしまう恐れが非常に高くなります。
そうなったら、閉鎖病棟は機能マヒに陥り、緊急の患者様の受け入れができなくなってしまいます。
さらに、閉鎖病棟には認知症で入院中の高齢の患者さんもいらっしゃいます。
もし、高齢の患者さんにうつしてしまったら、命の危険につながるかもしれません。
私だけの問題じゃないんです。
病院全体の問題なんです。
私は月曜の朝一で職場に電話し、午前の仕事をキャンセルした後、近所の内科を受診。
インフルエンザA型感染が確定し、看護師さんから4日間の自宅療養を命じられました。
実は今も、療養中です。
…ん?長い?
ブログ書いてるくらいだったら、出勤して仕事しろって?
いやいや、そうはいかないんですよ。
インフルエンザウィルスは、病状が治まってからも体内に留まり感染させる力を持っているので、発症後5日は自宅にいなきゃならないんです。
出勤したら、優しい看護師さんに張り倒され…(; ・`д・´)以下略
ちなみに、医療機関ではたいてい感染対策委員会などのグループがあり、患者さん、スタッフも含めた感染状態の把握、保健所からの情報収集、職員への指導を行っております。
(保健所などからはインフルエンザの定点観測や警報の情報が発表されます。地域保健対策を復習しておきましょう)
では、なぜ院内感染対策をするのか。
①患者さんを守るため
みなさん、病気を治しに病院に行ったにも関わらず、そこで重大な感染症にかかったらどうしますか?
たいていの方は納得いかないでしょう。
命の危険にさらされる可能性もあるので、まずは患者さんを守るために感染対策をしなければなりません。
②医療資源を守るため
私の職場でも数年前、病棟でインフルエンザが広がり、緊急の患者さんの受け入れを断らざるを得ませんでした。
ベッドが空いているのに、スタッフがいるのに、患者さんを受け入れられない。
こういうこともあるのです。
医療機関は薬と同じく、限られた医療資源だと思います。
医療資源を有効に使い、患者さんをいつでも受け入れられるよう、感染対策は重要なのです。
さらに、医療機関のスタッフは感染源にならないよう、自分が感染しないように十分注意します。
当然、インフルエンザの予防接種は義務です。
(そのため、医療機関によってはスタッフの予防接種を無料、または安く受けされてくれます。私はアレルギーで予防接種ができないので、毎年きちんと理由を添えて受けられないことを報告します)
インフルエンザ以外の感染症のことも勉強しておき、手洗い、うがいを徹底します。
個人で心理面接オフィスを開いている先生も、クライアントに感染させないよう、ご協力いただきたいと思っています。
おまけ 感染対策のコツと便利な仲間たち
さて、ここからは試験から離れて、感染対策の具体策を私の職場での実践を参考にご紹介します。
おまけですので、勉強を進めたい方は飛ばしてください。
まず、冬場の感染症には代表的なものが2つあります。
①インフルエンザー38℃以上の高熱、強い全身倦怠感、筋肉痛など
②ノロウィルスー急激で強い、下痢と嘔吐
この2つの感染症は我が職場でもめちゃくちゃ恐れられており、担当医師と看護師さんが中心になって毎年、綿密な感染対策が行われます。
一般の方は、「感染症予防にはアルコールを使えばいいんでしょ」と思いがちですが、実はノロウィルスにアルコールは効果がありません(インフルエンザウィルスにはアルコール系消毒剤が効きます)。ノロウィルスには塩素系消毒剤を使用します。
ですので、この2つの感染症を予防するために、アルコール系消毒剤と塩素系消毒剤を併せて使っていきます。
でも、日常ではどのハンドソープや消毒剤がいいかわからないと思いますので、なかなか市販ではお目にかからない医療用除菌グッズをここにご紹介します。
(どれも私の職場で使われていて、使用感がいいものを自宅に取り入れています)
おススメ その1
花王ソフティEX‐CARE
職場では手洗い励行。
公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版]・p65でも処置の段階ごとに趣旨を洗浄することを勧めています。
でもね…。
何度も、何度も手を洗うと、当然荒れるんです。
荒れて傷ができると細菌も感染しやすくなるので、手指の肌は健康な状態をキープするのが感染対策でも理想です。
そこで、最近、私の職場で導入されたのがこちらです。
洗浄成分が穏やかなものが使用されており、洗う感触から違う…。
トゥルトゥルなんですよ、これ。
感動して、早速自宅にも導入しました。
肌の弱い人でも気兼ねなく、何度も手洗いできるのがGOODです(*´▽`*)
手を洗うときは、手首も忘れずに。
汚染物を触ったときは、腕も洗いましょう。
また、みなさんが毎日使うカギも雑菌がつきやすい場所です。
手洗いついでに、カギも小まめに洗いましょう。
おススメ その2
ソフティハンドクリーン手指消毒ジェル
手を洗うところまでいかなくても、あるいは洗った後にさらに消毒のために使われるのが、同じソフティシリーズの消毒剤なのですが、たいていはプッシュ式のアルコールミストなので、肌の弱い人には若干使いにくいのです。
そんな方のために、ジェル状の手指用消毒剤があります。
うれしいのは花王が独自に開発し、化粧品キュレルシリーズにも入っている疑似セラミドが成分に含まれていることです。
さらに、このボトルは女性の手の中に収まる大きさで、持ち運びにも便利。
家の中で場所を取らず、外にも持って行けるのがいいと思っています。
おススメ その3
セイフキープ
手指消毒ハンドジェルがアルコール系だったのに対して、こちらは塩素系の消毒薬が入った使い捨てウェットティッシュ。
これで、ドアの取っ手、窓の取っ手、椅子を寄せるとき手をかけるところ、パソコンのキーボード、マウス、受話器、などなど…考えられ得る、“日常でよく手で触るところ”とフキフキします。
「どこを日ごろ触っているか…」
さあ、考えてみましょう。
ここは、心理士としての腕の見せ所ですよ。
ただし、塩素系ですので、メッキや金属のものは腐食する恐れがあります。
また、ノロウィルスを完全に消毒するには、塩素系薬剤を適度に希釈して消毒する必要があるので、万能ではないことを頭の隅に入れておいてください。
おススメ その4
かんたん汚物処理キット
私の職場には通称“ノロセット”というものがあります。
これは、万が一、ノロウィルスに感染した患者さんが吐いた場合に使う道具のことです。
ノロウィルスもインフルエンザ同様、感染力が非常に強く、吐しゃ物の処理にあたった人が知らずに感染することも多いのです。
しかし、吐しゃ物を放っておくと感染は余計広がります。
そこで、バケツの中に、使い捨てのプラスチックエプロン、グローブなどをバケツに入れて、いつでも持ち出せるようにしているのです。
家ではなかなか使い捨てのプラスチックエプロンを用意するのは難しいと思っていましたが、こういうものもあるんですね。
すごいわ、花王さん。
患者さんの中には、ノロウィルスにかかった患者さんの看病をしていた家族全員が感染した、という人もいたので、こうしたものを家に置いておいて、家の中での感染拡大も防いで欲しいと思います。
また、その後はキッチンハイターやブリーチなどの漂白剤を適度に希釈し、床などを拭いて消毒します(詳しくはこちら→花王お問い合わせ
http://www.kao.com/jp/soudan/topics/topics_067.html
)
いや、しかし、こうしてみると、うちの病院、花王さんにお世話になってるなー。
ということで、長くなりましたが、今日はこの辺で。
これからは個人オフィスに医療機関からクライアントをお願いする機会も増えるかもしれません。
そういう時に、医療機関と同じ感染対策を行えるよう、まずお家で実践しながら、感染症対策を学んでください。
うがい、手洗いも徹底しましょうねー(´ω`*)。